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【民法1】瑕疵ある建物を設計・施工した者の買主に対する責任

民法
今回の問題はTKC論文演習セミナー民法 4です

とはいえ、なぜだかこの瑕疵ある建物の設計・施工した者の買主に対する責任は同じくTKC論文演習セミナー民法の1つ目の問題として掲載されています。そこで、今回はこれらをまとめて、素材となった判例をまとめていこうと思います。


平成19年判決

最初の判例最判H19.7.6であるが、これは建物の設計者、施工者および工事監理者は、「建物の建築にあたり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性がかけることがないように配慮すべき注意義務を」負い、「この義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者のが上記の瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなどの特段の事情のない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う」としている。

つまり、建築を請負契約に基づき注文した場合には、注文者は建物の瑕疵ついて民法634条2項に基づき損害賠償を請求することができるが、直接の請負契約等の契約関係のない建物の買受人については、不法行為に基づく損害賠償が認められるということ
さらに、この損害賠償額認められるのは、建物が建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合であるとしている

この平成19年判決の原審は不法行為が認められる場合を「強度の違法性がある場合」と限定していたが、最高裁はこれを否定した。


平成23年判決

次に、この平成19年判決の差戻上告審である最判H23.7.21は、平成19年判決の「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは何かについて「居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該建物を瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性をを損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」

平成23年判決はさらに、「所有者が、当該建物を第三者に売却するなどして、その所有権を失った場合であっても、その際、修補費用相当額の補填を受けたなど特段の事情がない限り、一旦取得した損害賠償請求権を当然に失うものではない。」としている

つまり、瑕疵が発覚した場合には建物の価値は減少せざるをえず、これをたとえ転売したとしてもこれを考慮した額となる。そうであれば、いまだ損害は回復していないであろう。もっとも、転得人においてこの瑕疵を修補する等の特約がなされ、瑕疵のない建物としての価格で取引がなされた場合には、右転得人が設計・施工者に損害賠償請求をすることができることになるんだろう


平成22年判決

不法行為に基づく損害賠償についての一連の判例とは事例を異にするが、同様の問題において、設計・施工者等から建物における居住利益を控除すべきであるという反論がなされた最判H22.6.17も重要である

この判例は、居住利益の控除については認めなかった明確な理由を述べていないように思えるが、補足意見が秀逸であるため挙げておこう

「建物の瑕疵は……。賠償を求めても売主等が争って応じない場合も多い。通常は、その間においても、買主は経済的理由等から安全性を欠いた建物であってもやむをえなく居住し続ける。そのような場合に、居住していることを利益と考え方は、あるいは売主等からの賠償金により建物を建て替えると耐用年数が伸長した新築建物を取得することになるとして、そのことを利益と考え、損益相殺ないし損益相殺的な調整を行うとすると、賠償が遅れれば遅れるほど賠償額は少なくなることになる。これは、誠意なき売主等を利するという事態を招き、公平ではない。」

こんな格好いい意見をかけるようになりたい。