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【刑法2】トランクへの閉じ込めと後続車追突による死亡との因果関係

刑法
本日は事例から考える刑法 事例13です

刑法の問題で1人が数罪に関わるような場合に、必ず1つは見落としてしまうのは自分の未熟な点である
これが致命的な見落としにならないように気をつけたいところである

事例の詳細は省略するが、今回の事例で言えば強要未遂罪、そして致命的なのはYのAに対する自動車運転過失致死(現行は過失運転致死)の成否

自分の頭の整理として、Xの罪責についてはおおむね理解が及んでいたので措くとして、見落としていたYにおけるAへの過失運転致死罪の成否ついて考える


因果関係の問題

まず解説では、Yが停車するXの車両のトランク内にAが閉じ込められていることにつき認識不可能であったことを因果関係の問題とする。
ここで解説が指摘するのは、因果関係論における「相当性」と「危険の現実化」という二つの基準の関係である。たしかに近時の判例は「危険の現実化」を基準とするというのがよく言われることであるが、解説によれば、この両者は行為時の事情をいかに考慮するかという問題と事後の事情をいかに考慮するかという異なる二つの場面を想定していることから、択一的なものではないということである。

因果関係の問題では介在事情の性質と判例の検討を類型的にまとめることで理解してきたので、あまり違和感はない。
大阪南港事件や患者不養生事件などはそもそも介在事情を無視し、因果関係を肯定できる類型であるという分類はなんとなく新しく感じた。

本事例ではYが追突した時点でAがトランク内に閉じ込められているという事情であるから、相当性の問題とすべきで、折衷説であれば否定される可能性があり、客観説であれば肯定されることになる。


過失(予見可能性)の問題

次に、YとしてはAがトランク内に閉じ込められていることにつき認識不可能であったのであるから、過失犯として要求される予見可能性が否定されるのではないかという点で過失の問題とする。

過失については、荷台事件をみる。
このうち荷台事件では、運転者の危険な走行によれば、歩行者ないし同乗者が死亡する予見可能性があったことから、運転者の認識していなかった荷台に乗った二人についても犯罪の成立を認めたものである。
正直なところ、本事例の解説よりも、判例百選の荷台事件の解説を読んだ方がいいと思う。解説の最後に別事件であるトランクへの追突をした者が業務上過失致死で略式起訴されている点も記述されていた。

この問題は「予見可能性はどの範囲について要求されるか」という点である。つまり、本事例ではYが「トランク内に閉じ込められているAを死亡させる」ことについて予見可能性があったのかという点まで要求されるか、「前方不注意で走行すれば人を死亡させる」ことの予見可能性で足りるのかということになるのだろうか

行為者の行為の危険性が高まれば、異常な事態への予見可能性も要求されるようになるという関係にあるようである。

なんともこの事例の解説は鼻につく、この本を読んでいて初めてと言っていいほどストレスの溜まる解説であった。
「島田総一郎教授は神、学生はクソ」としか読み取れない自分はまだまだなのだろうけど、自分のなかで高評価だったこの本に疑念が生まれてしまった。残念である。