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【憲法2】積極的差別解消措置と法の下の平等

今回は事例研究 憲法 第2部 問題1です。素材となっている国内の判例はないようである。

事例としては、
Y県で、女性の社会進出を進める政策の一環として、公立学校における条例が制定され、これと教頭の採用候補者選考試験における合否が関連んされる問題である。Y県では右条例に基づき基本計画を策定し、女性の地位を改善するための積極的改善措置を盛り込んだ。具体的には、採用候補者選考試験において、女性であることをプラス要素とするというものであった。ある選考試験では単純な得点では男1、男2、X、女1、女2の順であり、合格とされるのは男1、男2、X、女2だったが、基本計画に従い合格とされたのは男1、男2、女1、女2であった。そこで、XがYに対し国家賠償請求をしたものである。

本問においても設問1はXの憲法上の主張、設問2はYの反論および私見を求めるものである。

Xの主張について

本問ではXはYに対して国家賠償請求をしたということであるから、国家賠償法1条1項における違法な公権力の行使があったことを主張することになる。

事例においてはYが本件選考試験でXを不合格にしたことは憲法14条1項の保障する法の下の平等に反する差別的取り扱いであるから、違法な公権力の行使に当たる旨を主張することになると思われる。

憲法14条1項に関しては、これが絶対的平等を定めたものであると考えるとかえって差別を生むことになるため、事実上の差異に着目して、相対的平等を定めたものであると考えられている。そこで、14条1項により禁止されているのは不合理な区別である。Xとしても絶対的な平等を主張するのではなく、相対的であるが不合理であるという主張をすべきである。

Xとしては、本件における区別が性別によるものであることから慎重に審査されなければならない旨主張し、厳格な審査基準によるべきであるとする。たしかに本件合否の根拠として基本計画に基づく積極的改善措置があるといえ、これの策定目的は重要ないし必要不可欠であるとも言える。しかし、積極的改善措置の内容として女性であることをプラス要素とすることは、性差別そのものであり、その他支援策の実施などでも状況の改善が可能であるとして、不合理な区別であり、違憲であり、違法な公権力の行使にあたると主張する。


Yの反論について

Yは本件選考試験は条例に基づく基本計画に沿ってなされたもので、これは差別的状況を改善するための積極的改善措置であり、重要である点を反論として主張する。

積極的改善措置の内容は性別による差別であるが、これはもともと生じていた差別的状況を改善するためのものであるから厳格に審査することが妥当ではなく、ある程度緩やかになされるべきであると主張する。そのためには、本件措置のようなプラス要素とする態様も合理性が認められると主張する。

そして、このような合理的な区別は14条1項のに反するものではなく、違法な公権力の行使には当たらないと反論する。

私見について

私見では、一般に14条1項後段列挙事由に対する差別は保護することが歴史的に重要なものであると解し、その区別の合理性は厳格に審査されなければならないとする。もっとも、14条1項後段列挙事由につき右のように解するとすれば、現に生じている差別的状況の改善措置については一概に厳格にすることが妥当でないとも考えられる。そこで、審査基準としては中間審査が妥当とする。

そして、XYの主張より本件積極的改善措置の内容を分析していきたい。

まず、積極的改善措置がそもそも生じていた差別に対する改善を目的とすることから、その必要性および正当性を肯定することができる。もっとも、行きすぎた積極的改善措置は逆差別につながることを指摘し、やはり合理性のある内容でないとならないことを述べる。

そこで、積極的改善措置の態様について、考えられる態様を検討してみる。
まず、①これまで差別的取り扱いを受けてきた者について別枠を設ける方法、本事例で言えば女性枠を初めから割りあてる方法である。次に、②本事例のようなプラス要素とする方法、さらには、③支援策を講じることや環境整備をする方法が考えられる。

①については、絶対的・硬直的な方法であるから合理性に疑いがある。③はより間接的な方法であるから合理性が認められると考えられる。そこで、やはり本件のような②プラス要素とする方法が問題となる。

上記のようにプラス要素とする方法は中庸的な方法として合理性が認められるとも考えられるが、この方法を採ったとしても、具体的な運用上これが絶対的・硬直的である場合もしくは有利な集団の者の利益を著しく害することになる場合には合理性が否定されると考えるべきである。

本件では、Xは得点のみであれば3位として合格できたはずであるが、男女を1対1とするような態様の結果不合格とされていることからこの運用が硬直的であることを指摘できる。さらに、Xの代わりに合格した女2は得点のみでの順位では5位であり、Xは順位を2つも下げられていることからXの利益を著しく害する態様であったことを鑑みると、たとえプラス要素とする方法であったとしてもその態様は不合理であったと言える。


この問題を最初に解いたときはアメリカ法判決なんて知る由もなく、純粋に審査基準を定立して解くことを意識していた。そのため、Xの主張および私見では、プラス要素とする方法における得点の影響がブラックボックスになっていることを問題として構成した。正直なところ、アメリカ法判決ありきで構成された解説はなかなか難しいものがあると思ったので、一つ勉強になったとポジティブに考えることにした。

最後に、解説で記述のあるメリットシステムについて考えてみる。
メリットシステムとは、つまるところ能力主義のことであり、自由社会主義の平等感が個人は能力に応じて機会やポストを配分されるものとするため、改善措置はこれに反するというものである。地方公務員法15条がこのメリットシステムを採用しているとすれば、この点をXとしては主張することができるという。



やはり自分は知らないことが多すぎるのだろう。でも、基本に忠実に、事案を分析して問題点について思考を巡らせたい。