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【民法2】借地上建物に対する根抵当権と土地賃貸借の関係

民法
今回はTKC論文演習セミナー 民法 問題5です。素材判例最判H22.9.9です。

事案の概要としては、土地を賃借したAが借地上に宅地を立てこれにつきC銀行が根抵当権を設定したというものにおいて、Cが賃貸人たるBに対して「賃料の不払い等により賃貸借を解除する場合には、Cに対して通知し、賃借権の保全を図ることとする。」という旨の念書を差し入れ、これにBが署名押印し、Cに返還したという事情がある。その後、Aが賃料不払いとなったが、BはこれをCに通知せず賃貸借契約を解除し、Aに対して建物収去土地明渡を求めているというものである。

設問1はこれに対する差止めができるか。
設問2は建物が取り壊された場合にCがBに損害賠償請求が可能か、である。

タイトル及び問題の分野的には抵当権に分類されているが、実際には念書に基づく合意に対する法的義務の発生の有無と、これに反する場合に差止めないし損害賠償請求が可能かどうかが問題となる。ちなみに素材判例では損害賠償請求のみが問題とされている。


念書に基づく合意の法的義務

抵当権を設定する際、抵当目的物が借地上の建物である場合、借地権が消滅した場合に建物が取り壊されれば抵当権者は不利益を被ることになる。そこで、本件のように抵当権者により借地の所有者または賃貸人に対して借地権の保全を求めることがなされるようである。

このような合意がいかなる法的義務を生じさせるかを考えていかなければならない。

そもそも、合意がなければ借地権解除についての催告を借地上の建物の賃借人にする必要はない(最判S51・12・14)とされているから、抵当権者に対しても催告することは不要であると考えられる。もっとも、抵当権者は抵当目的物が取り壊されれば抵当権を失うことから、賃料を代位して弁済(民法474条1項)することは認められる。

では、本件のような合意がなされていた場合にはどうか。学説上はこの事前通知義務条項の拘束力を肯定するもの、否定するものとそれぞれ主張されている。そこで、素材判例の解説を踏まえて検討していく。

素材判例では、事前通知義務条項による拘束力を肯定している。事例において「賃貸人が事前通知義務条項について十分に認識し検討する機会があったこと」や「賃貸人が業として賃貸をする者であったこと」が挙げられているため、事例判断的な面もあるが、これらの基準を参考にして同様の問題に対して考えていくことになろう。

判旨では、事前通知義務条項に基づく通知義務の合理的な根拠は述べられていないようであるが、CからBに差し入れられた念書において複数の条項が規定されそのうち一つが当該事前通知義務について定められたものであった。そこで、このような意思の合致は法的義務を発生させるに足り、一種の契約が成立していたと考えているのであろう。訴訟物も債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)とされていることからもこのように考えられるのではないかと思う。

このような特殊な義務を発生させる根拠としては信義則によるものが考えられるが、これを根拠として使うというより、むしろこれを否定する要素として「信義則に反することがない限り成立する」と言った使い方をしている。

差止めについて

設定1では建物が取り壊される前の段階での差し止めの可否について問題としているが、素材判例もその解説も触れていないようである。

民事上の差止め請求は根拠を示さず認めたもの、認めないものそれぞれあった気がするが、本件においてはどうかわからないところである。

他に考えられるとすれば、民事保全法における仮処分とかであろうか