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【刑訴2】平成28年司法試験刑事系2問目

刑事訴訟法 司法試験
今回は平成28年司法試験刑事系2問目について検討していきます

設問は一つの事例に関して4つ出されている事例を概観すると、
通報により駆けつけた警察官らが甲につき職務質問を開始し、覚せい剤の使用にっき疑いをもったことから、任意による採尿手続を求めたがこれを拒絶し、警察官らは説得を継続させるために甲をその場に留め置いた。その後、裁判所による捜索差押え令状の発付を受けてこれ執行し、覚せい剤を発見したことから現行犯逮捕をした。甲に対する取調べにっいて検察官は、弁護士の面会の申出に対し、取調べ後の時間を指定し、その後、甲が自白しそうになったことから、この指定及びさらなる申出に応えず取調べを続行した。この自白から乙の存在が明らかになったことから、乙について公訴が提起され、公判前整理手続を経て証拠調べがなされ、甲が証言した。その後被告人質問において乙は公判前整理手続中に述べた事と異なる主張をした。
というもの。

設問1は捜査の適法性、とりわけ警察官の甲に対する留め置きが問題となる
設問2は接見指定の適法性、2度にわたりなされていることが問題となる
設問3は甲が乙の公判中に証人として証言した内容について要証事実を検討して証拠能力の有無を問題とする
設問4は乙の被告人質問中の発言が刑訴法295条1項により制限されるものであるかが公判前整理手続の実施との関係で問題となる


設問1について

まず、警察官の行為は職務質問にあたるから、警察官職務執行法2条1項の要件を検討する。もっとも、特に問題なく認められる。

本事例のような職質による説得の継続のための留め置きはその態様から強制処分たる逮捕と実質的に同視しうる場合には、令状主義に基づき裁判官の発付する令状が必要となる。本件においてはあくまで任意による説得がなされていたものと考えられるから、強制処分とは言えない。もっとも任意処分であっても警察比例の原則から必要最小限度の行為でなければならず、これは当該行為の必要性・緊急性、そして手段の相当性の観点から検討する必要がある。

本事例で着目する事情としては、警察官の甲に対する嫌疑と警察官の甲に対する行為の態様が段階的になっているという点である。上記処分の必要性・緊急性・相当性が被疑者に対する嫌疑と相関関係にあることを述べて、それぞれの段階における行為の適法性を事実を挙げつつ検討していく。
また、警察官が捜索差押え令状請求の手続きに入った時点も重要で女ることに言及したい。

結論的には、いずれの段階においても任意性の限界を超えるものではなく、適法と考えることができる。


設問2について

接見の指定については刑訴法39条3項の「捜査のため必要があるとき」にあたるかを検討することになる。さらに、これにあたるとしても、後段の「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限する」ものにあたらないかを検討する。

この点確立した判例(最判S53.7.10、最判H3.5.10)があるため基本的にはこれに沿って判断していく。

すなわち、「捜査のために必要があるとき」については、接見の申し出を受けたときに、現に被疑者を取調べ中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要がある等捜査の中断による支障が顕著な場合であるとし(最判S53.7.10)、捜査の中断による支障が顕著な場合には、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の必要とする接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定通り開始できなくなるおそれがある場合も含むとされている(最判H3.5.10)。

本問では①と②という2度に渡って接見指定を行っていることからこれらの違いを意識して検討する。

さらに着目すべきは初回の接見における指定であるということであり、弁護人選任権と密接に関係する接見が憲法上の保障のもとにあることを強調することが重要であると思われる。

結論的には、①については適法であるが、②については違法とするのが考えやすい。


設問3について

設問3においては乙の公判中に甲が証人として証言した内容について証拠能力を問うものである。
甲の証言中には、甲が乙から覚せい剤を買い受けた時に乙から言われた事が内容とされている。伝聞証拠の定義を「公判期日における反対尋問を受けない公判廷外の供述を内容とする供述又はそれに代わる書面」として、甲の証言中の乙の発言は公判廷外の供述であるから伝聞証拠にあたる可能性がある。

そこで、伝聞証拠排除原則(320条1項)について述べ、これにあたるかは要証事実との関係で考えるべきであるとする。

本件においては、乙の公判における争点との関係で甲の証言は乙が甲に売ったものが覚せい剤であることを認識していたことが要証事実になり、これは甲の証言した乙の発言の真実性を要証事実とすることと異なり発言の存在が推認することができるものであるから伝聞証拠ではなく非伝聞として原則的に関連性があれば証拠能力が認められるといえる。


設問4について

設問4では、乙の被告人質問中の発言を295条1項によって制限できるかが問われている。
295条1項中の要件で本件の乙の発言が該当しそうなのは、「相当でないとき」である。そして、「訴訟関係人の本質的な権利を害さない」か否かも検討する必要がある。

さらに、問題文の誘導として、公判前整理手続がなされたこと、乙が発言した内容等を考慮せよというものがあるため、これらを一つずつ考えていくことになる。

公判前整理手続では316条の32において、同手続き後の新たな証拠調べ請求を制限している。もっとも、新たな主張の追加や変更に関しては制限する規定が設けられていないことから、一般に認められるとも考えることができる。しかしながら、同手続きを経た後に主張を変更することによって、公判前整理手続の趣旨を没却するような場合には、295条1項により制限することも認められると考えるべきである。

どのような場合に公判前整理手続の趣旨を没却することになるかは、当該主張の状況や、新たな主張がされるに至った経緯、新たな主張の内容などを総合的に考慮して判断すべきである。

本件では公判前整理手続において裁判所が乙のアリバイについて求釈明を行って争点を明確にしたにもかかわらず、公判廷において主張を変更しており、これにより検察側も新たな立証を要することになりかねない。そうであれば、乙としては被告人質問がなされる前に主張を変更することを明らかにしこれを申し出る必要があったと言える。

しかし、乙の発言は「戊からの手紙が公判前整理手続以後に到着することで思い出した」というものであるから、この点が事実であれば、乙のアリバイが公判の争点となっていることからも「訴訟関係人の本質的な権利」に該当するものとして、295条1項による制限が否定されることも考えられる。

参考となる判決は最決H27.5.25のようである。

まとめ

今回の問題は、設問が4つ、それぞれが独立した論点での出題で、ひとつひとつに当てられる時間は限られるように思う。公判前整理手続については条文を素早く指摘できるかも求められるため、基本的な知識の多さが重要になってくると感じる。

伝聞証拠については、その定義が公判期日外でなされた供述を「内容」とする供述という点が抜け落ちており、甲が公判廷で証言した供述であれば324条の適用が考えられるのではないかというミスを犯していたのは反省したい。