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【憲法4】信教の自由と教職員の採用

憲法

今回は事例研究 憲法 第2部 問題3です。素材判例は日本にはないようで、ドイツで問題となった事案のようである。

 

事案としては、イスラム教を信仰する日本人女性XがY県の公立中学校で英語教師になるため採用選考を受け、これに受かり採用候補者名簿に登載されたが、Xがスカーフを着用していることからいずれの学校からも採用されず、結果的に採用候補者名簿からの削除がなされたため、本件削除の取消を求めて訴訟を提起したというものである。なお、学校からの採用が得られなかった理由として政教分離原則違反となるおそれが懸念されたことが記載されている。

 

本件では、根拠となった法令や選考についての要領に文面上違憲となる要素が認められないため、直接的に処分の違憲を主張することになるであろうが、ここでの審査方法について、当初はY県に教職員の任命権につき広い裁量権が認められていることから裁量権の逸脱濫用による方法を考えていたが、解説ではここでも目的手段審査が妥当するとしているため、これを用いて検討した。

 

Xの主張

Xとしてはスカーフを着用することが20条1項の保障する信教の自由に含まれるものであることを主張する。

 

また、これを理由に採用候補者名簿から削除されたことは信教の自由の制約に当たることを指摘し、公共の福祉による正当化も認められないことを主張する。

 

ここで、後述するY県からの反論として出される政教分離原則についても、すでに問題文中に記述があることからも、先行して再反論を述べることも考えられる。基本的には、Xとしては、信教の自由の重大性から審査密度を濃くすべき、政教分離原則については緩やかに解してもよいというスタンスを意識する必要がある。

 

Y県からの反論

以上のXの主張に対して、Y県からは、スカーフを着用することが信教の自由に含まれると解されても、公共の福祉により正当化される旨の反論をする。

 

この反論においては、問題文中にも指摘があるように政教分離原則との関係をも基礎とすることができる。自分としては、信教の自由の制約が正当化される論証とスカーフ着用を認めることが政教分離原則違反となる旨の主張はそれぞれ独立に考えてもよいと思ったが、信教の自由の制約根拠に政教分離原則違反の懸念を用いる(総合的に判断する)方がよいのかもしれない。

 

Y県としては政教分離原則の判断について、公立学校での公教育の中立性を強調し、厳格に審査する、また、教職員の広範な任命権を根拠に緩やかな審査により人権制約の正当化を審査すべきであるとの反論をする。

 

私見について

私見では、それぞれの主張を踏まえて、問題文中に示された事実を分析・評価してその妥当性を考えていきたい。

 

まず、信教の自由の制約に対する正当化と政教分離原則違反の懸念を独立に論じるとすれば、先に政教分離原則について結論を出しておきたい。なぜなら、政教分離原則については従来の判例を踏襲して目的効果基準による判断が可能であるから、これによりY県の反論が妥当でない旨(スカーフ着用を認めても特定宗教の援助、助長、促進にはならないため政教分離原則違反とはならず、これを理由に削除することは許されない)述べてから、目的手段審査による検討をする流れに持って行こうと考えるからである。

 

結局のところ、信教の自由の重大性とY県における広範な裁量権とを考慮して、中間的な審査基準を定立し、あてはめを行いたい。

本件事実では、Y県における住民に対するスカーフ着用が問題となりそうもないこと、Xが教育実習中にスカーフを着用しても問題が生じなかったこと、教師がスカーフをすることの生徒への影響が不明であること、などXに有利と思われる事情が多く見られるため、これを評価して採用候補者名簿からの削除は違憲であるとしたい。

 

 

事例研究 憲法の第2部の問題はこれまでの判例がなく未知の問題を取り上げていて、非常に難しい。前回の憲法で司法試験問題を検討したが、これも事例研究に類似の問題が掲載されていることからも、そのレベルの問題が多くあるといえる。

この解説も、きちんとXYの主張形式に構成されているが、結局のところ答案を書くことを意識すると私見に当たる部分が書かれていなくて戸惑う。解説を読むときは、XYの主張形式になってはいるが、これは私見で取り上げるとして、「答案でのXYの主張反論」はこれをブラッシュアップした党派的主張に変換して書くしかないのかもしれない。

 

ちなみに、第2部の問題2については自分で解いたはいいが酷い出来だったのでボツになりました。再検討の必要性が高い。