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【行政法5】執行停止の要件、代表出訴資格

今回は、事例研究 行政法 第2部 問題7を素材に、執行停止の要件と処分の名宛人以外の者の原告適格および代表出訴資格について考えていきたいと思います。

 

今回の事例では、R社がEから事業停止処分のを受けたことから、右処分の取消訴訟を提起することになるが、これに付随して、取消訴訟を提起し処分の違法性を争っている間の事業継続のために行政事件訴訟法25条2項の執行停止を申し立てることになります。そこで、この執行停止の要件を25条2項および3項を整理しつつ考えていきます。

 

執行停止の要件

執行停止の要件を見る前に、執行停止が必要とされる趣旨を確認しておく、それは執行不停止原則という25条1項に現れている。すなわち、行政機関による処分は、これが違法であるとして取消訴訟が提起されたとしても、処分の効力、処分の執行または手続きの続行を妨げられない。そこで、執行停止のためには同条2項による執行停止の申し立てが必要となるのである。

 

では、執行停止が可能となる要件を確認する。取消訴訟の提起という形式的な面を除けば、重要な要件は

処分、処分の執行または手続きの続行により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」

である。

 

これを整理すれば、「損害の重大性」と「緊急の必要性」というふうにすることができるだろう。この「緊急の必要性」については、処分により生ずる損害が発生することが確実であり、これを防ぐために執行停止をすることが必要であるということであるから、事実に即して検討すれば良い。

 

他方「損害の重大性」については、同条3項においてさらなる考慮要素が提示されていることから、これに沿って検討することになる。つまり、損害の重大性は損害の回復の困難の程度であり、これは「損害の性質・程度」+「処分の内容・性質」を勘案するとされている。損害の性質・程度が重度であれば回復の困難性が高まり、損害の重大性が認められると考えられる。ここで重要なのは、「処分の内容・性質」をも勘案することができるという点であろう。すなわち、当該処分を受ける者のみならず、当該処分が有する社会的な影響力をも勘案し、これによって生じる不利益が法の趣旨目的に反するとすれば、損害の重大性が認められ得るということになるのである。

 

本事例においては、R社が主張する損害のみでは本件処分を維持する必要性を上回るとは言えないが、その他の利用者らへの影響を合わせて勘案すれば、これを上回り、損害の重大性を認めることができるとしている。

 

以上の積極要件が認められる際にも、消極要件についての検討を忘れてはならない。つまり、同条4項は、「公共の福祉に重大な影響を及ぼす恐れがあるとき」および「本案について理由がないとみえるとき」には執行停止が認められないとされている。

 

9条2項の構成

つぎに、事例の中では、処分の名宛人たるR社以外にも、R社と同様に処分を争いたいBという処分の名宛人以外の第三者が独自に取消訴訟を提起するということが想定されている。そこで、このような者の原告適格について考えていきたい。

 

まず、取消訴訟を提起することができるのは、9条1項によれば、法律上の利益を有する者に限られるとされている。そして、この「法律上の利益を有する者」とは、「法律上保護された利益を有する者」であるとするのが判例および通説の考え方である。

 

そして、本件のような処分の名宛人以外の第三者の原告適格の有無については、同条2項に従い法律上の利益(法律上保護された利益)の有無を検討することになる。

 

9条2項は上述の執行停止の要件と同様に考慮要素が条文上挙げられていて非常に読みにくいものとなっているから、整理しておきたい。

 

大まかに整理すれば

根拠法令の文言

当該法令の趣旨目的

(当該法令と目的を共通にする関係法令の趣旨目的)

当該処分において考慮されるべき利益の内容・性質

(侵害される利益の内容性質・害される態様程度) 

となる

 

つまり、

根拠法令の文言が第三者の利益をも法律上の利益としていれば認められる。

当該法令の趣旨目的が第三者の利益をも法律上の利益としていれば認められる。また、当該法令と関係する法令の趣旨目的で法律上の利益とされていても認められる。

侵害される利益の内容性質から第三者の利益をも法律上の利益と言えれば認められる。

ということになろう。

 

さらに、処分の名宛人以外の者の原告適格については、原告からの主張に置き換えれば、利益の確定→保護法益性のテスト→個別的利益性のテスト→侵害の有無というプロセスで検討されることになり、この保護法益性および個別的利益性のテストを上記のような考慮要素を含めて検討することができるということになる。

 

本件Bにおける、住民たる地位(観光業社たる地位)から原告適格を検討すれば、海上運送法1条の趣旨から利用者の利益保護という保護法益性を認定し、生活上大きな不便という事情から侵害される利益の内容が個別的保護されたものとしている。当てはめの部分は機械的な作業ではないと思われるから、ある程度総合考慮しているという気持ちでおこなうことになるだろう。

 

代表出訴資格という地位

Bには、上記の住民たる地位とは別に、「Z号運行停止を回避する会」の代表という地位も考えることができる。このような地位から取消訴訟を提起するとすれば、他の住民たちの代表として原告適格を有するという代表出訴資格という考え方ができないかが問題となる。

 

この代表出訴資格という言葉はなかなか聞き馴染みがないものだが、これが主張されたのは、伊場遺跡保存訴訟判決(最判H1・6・20)である。この事件名を聞けば、史跡の解除処分を争った学術研究者たちに原告適格が認められなかったというところが思い出されるだろう。これは、上記の9条2項が新設された平成16年以前のものであるから、この9条2項によれば認められ得るとの考え方もあるが、確実なものとはかんがえられていないようである。それは、上述した法律上保護された利益説が通説判例となっており、これが何らかの制定法上の根拠が求められていると考えられているからのようである。

 

さて、代表出訴資格についてであるが、これは国民・住民が有する「共通的利益」についてこれが広範ゆえに原告適格の判断が困難になり、結果として訴訟で争える者がいない状況を打破するために用いられた理論である。もっとも、判例においてはこのような資格を認めた規定が存在しないことから、認めなかった。結局のところ、このような代表と考えても、その者において「法律上の利益」が存するかを検討することになるのだろう。