読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

【民法5】有責配偶者からの離婚請求、財産分与

今回は、事例から民法を考える 問題20を素材に、有責配偶者からの離婚請求の可否と財産分与について考えてみたいと思います。

 

民法においても親族については論点を考えてみる機会が少なかったので、改めて再確認という感じでやっていきます。

 

有責配偶者からの離婚請求

親族に関して事例問題を検討することが滅多にないとしても、この有責配偶者からの離婚請求という論点については聞き覚えがあると思う。

 

つまり、不貞やその他離婚原因となる事由を生じさせた当人からの裁判上の離婚請求は認めるべきではないということである。もっとも、このように厳格に解するのは過去の判例であり、近時の判例では有責配偶者からの請求であっても、その一事をもって離婚請求が否定されるとは考えられていない。例えば、相手方配偶者にも何らかの離婚原因となりうる事情がある場合などには、有責配偶者からの離婚請求が認められ得るということである。

 

以上がこの論点においての自分の理解である。しかし、具体的事案において離婚請求が認められるか、否定されるかを判断するには、より具体的な基準をたて、これに当てはめるといった検討をしなければならない。そこで、上記のような判断をした判例をもう少し詳細に確認して、判断基準ないし考慮要素を考えていこう。

 

最大判S62・9・2

従来の有責配偶者からの離婚請求は認められないとする判例を変更した最大判S62・9・2は、別居期間が36年にも及ぶ事案であり、原告の不貞関係を知ったことから夫婦関係が破綻したが、この者からの離婚請求に対して、まず、770条1項5号の規定の解釈からは、有責配偶者からの離婚請求を制限するということはできないとし、このような場合には信義則により制限されるのみであるとした。そして、信義則により離婚請求が制限されるか否かの判断は

「有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思および請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態および夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係」等が斟酌されなければならないとの総合判断基準を定立した。

さらに判例は続けて①別居要件、②未成熟子不在の要件、③苛酷条件という三要件基準も立てている。

これら二つの基準の関係は、解説においても明瞭ではないとの指摘を受けている。一般には、どちらの要件も妥当なものであり、三要件基準で解決できうる場合にはこれを、三要件基準の①および②についてあてはなるとは言えない場合には、総合判断基準を用いて妥当な結論を導こうとしているというものと考えられる。

 

一概に総合判断基準を用いることの不都合さに、離婚事由の客観化という視点がある。つまり、離婚訴訟は非訟事件ではないため、公開の裁判により夫婦間の生活が明らかにされることがあり、客観的に判断できない場合には、これを基礎付ける具体的な事情を主張立証しなければならなくなるということである。もっとも、客観的事由により判断が難しい場合には、具体的事情により総合判断をする他ないように思う。

 

そして、この有責配偶者からの離婚請求の否定という争点は、原告からの離婚請求に対して、相手方配偶者が提出する抗弁となり、これに対して原告からは、(1)有責原因が発生したのは離婚原因が生じた後であること、(2)相手方配偶者においても有責性が認められるという再抗弁が考えられる。したがって、「離婚請求が認められるか」という問いに答えるためには、この点をも含めて解答する必要があることに注意が必要である。

 

財産分与との関係

有責配偶者からの離婚請求について緩やか解する見解は、離婚請求を認める代わりに、離婚の効果として経済的補償により救済することが望ましいという前提に立っている。そこで、このような場合に離婚請求を認めることと関係して、財産分与についても考える必要がある。本問としては「どのような事情が考慮されるか」という問いになっている。そこで、何が財産分与の対象となるか、それにおいてどのような事情が考慮されるかを考えていく。

 

まず、財産分与の性質として判例最判S46・7・23)は、清算、慰謝料、扶養という要素を上げる。もっとも、これの他に離婚前の別居期間中における婚姻費用分担としての費用も含むことができるとするものもある(最判S53・11・14)。そして、慰謝料という要素については、これと別個に不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるかが問題となるが、S46年判例は、財産分与で損害賠償を考慮したことにより評価し尽くされている場合には、認められないが、そうでない場合に別個に請求することも認められるとしている。

 

つまり、財産分与で考慮される事情としては、

婚姻費用の分担として考慮されるべき事情、婚姻中取得した財産の清算として考慮される事情、有責配偶者に対する慰謝料請求として考慮されるべき事情、および扶養に関して考慮されるべき事情であるということができる。

 

最後に、離婚請求と財産分与を一回的に解決する手続きを確認しておく。離婚訴訟において当事者が附帯申立てをすることが人事訴訟法32条1項により可能となった。この手続きを利用することで、離婚と同時解決を図ることができるようになった。

 

短答知識と割り切らず、きちんと理解する必要がある。これからは親族相続もきちんとやっていこう。