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【行政法6】行政事件訴訟の類型

今回は、事例研究 行政法 第2部 問題5を参考にして行政事件訴訟の類型およびそれぞれの訴訟要件を考えてみようと思います。

 

この問題では、大規模小売店舗立地法とそれに関連する指導要綱に沿ってなされた行政指導にスーパーマーケット出店業者Xが従わずに法に基づく届出をし、県知事がこれを受理せず返戻したという設問1と、法に基づく意見と勧告をそれぞれ県知事が行い、Xはこれに従わない旨を通知している状況でこれら意見・勧告の違法性を争う方法および、この事実を法に基づき公表しようとしている県知事に対抗する方法を考えるという設問2で構成されている。

 

また、設問では主にどのような訴訟を提起することが考えられ、その訴訟要件を具備しているかというところが中心となっている。そこで、今回は行政事件訴訟の概観の確認もあわせて、各種訴訟の確認と、訴訟要件を整理してみようと思います。

 

行政事件訴訟の概観

行政事件訴訟の類型としては、行政事件訴訟法2条において、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟および機関訴訟であると規定されています。このうち、抗告訴訟と当事者訴訟が個人の権利・利益の保護を目的とする訴訟である主観訴訟に分類され、機関訴訟、民衆訴訟は行政の適法性確保を目的とする客観訴訟に分類されます。今回はおもに主観訴訟に主眼を置いて考えていきます。

 

個人の権利・利益の保護を目的とする訴訟として抗告訴訟行政事件訴訟法3条)および当事者訴訟(同4条)が分類されるが、これらを区別するポイントは、訴訟の目的が「行政庁の公権力の行使に関する不服」か否かという点であると思います。

 

つまり、抗告訴訟として争うことができるのは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為についてであり、これは一般に処分性という要件とされています。したがって、処分性をゆうする行政庁の行為についての訴訟は抗告訴訟となり、処分性が認められない場合に当事者訴訟の提起を考えることになります。ではまず訴訟の目的が処分性を有すると考えて、抗告訴訟の類型を確認していきます。

 

抗告訴訟としては、行政事件訴訟法3条において処分取消しの訴え、裁決取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴えが規定されています。もっとも、この類型にあてはまらない場合においても訴えが許されないわけではなく、無名抗告訴訟として訴えを提起することができると考えられています。しかし、平成16年の改正により義務付けの訴えおよび差止めの訴えが明文として規定されたことから、無名抗告訴訟を考える必要性は少なくなったと思われます。

 

当事者訴訟としては、4条前段に当たる形式的当事者訴訟と4条後段に当たる実質的当事者訴訟に分類される。形式的当事者訴訟は法令の規定がある場合にのみ提起することができ、本質的に行政庁の処分および裁決の効力を争うものであるとして抗告訴訟としての実質を有すると言われている。そして、後段の実質的当事者訴訟は訴訟物を「公法上の法律関係」とするのみで訴訟類型について規定していないため、民事訴訟における給付訴訟および確認訴訟の類型が想定されている。各種手続きを考える上では、上記の分類を理解しておきたい。

 

訴訟要件の確認

では、抗告訴訟および当事者訴訟における訴訟要件を確認していきたい。基本的には抗告訴訟における取消訴訟が中心として規定が設けられ、これが各種類型の訴訟に準用されるという取消訴訟中心主義が行政事件訴訟法では採られている。

 

そこで、取消訴訟の訴訟要件を簡単に列挙すれば

①処分性

原告適格

③訴えの利益

④被告適格

⑤管轄裁判所

⑥不服申立前置

⑦出訴期間

ということになる。

このうち、⑥不服申立前置は取消訴訟においても法に特段の定めがある場合にのみ必要とされ、⑥および⑦出訴期間は取消訴訟独自の要件となっている。この中でもっとも問題となるのは、①処分性と②原告適格、③訴えの利益であろうが、今回は行政事件訴訟の概観として訴訟要件を確認するだけにとどめて、個別の問題はそれぞれで考えていきたいと思う。

 

取消訴訟以外のその他の抗告訴訟については、36条以降で個別の訴訟要件がある場合にそれが規定されている。まず、36条は無効等確認の訴えの原告適格につき、補充性を定める。37条では不作為の違法確認の訴えの原告適格につき、処分または裁決についての申請をした者に限るとしている。

 

義務付けの訴えにおいては、3条6項の1号および2号でふたつの類型が規定されており、これらは、1号が非申請型義務付訴訟、2号が申請型義務付訴訟とされ、それぞれ37条の2および37条の3で個別の要件規定が設けられている。非申請型義務付訴訟では、損害の重大性および補充性が要件とされており、申請型義務付訴訟では、取消訴訟等の併合提起が要件とされている。

 

差止めの訴えは、37条の4において、損害の重大性および補充性が要件とされている。

 

当事者訴訟の訴訟要件としては、形式的当事者訴訟においては、法令の規定がある場合という形式的要件が、実質的当事者訴訟においては、基本的には民事訴訟における訴訟要件、特に公法上の確認の訴えにおいては確認の利益が求められる。実施的当事者訴訟における公法上の確認の訴えでは、いかなる法律関係の確認をその対象とするかが難しいところであるが、民事訴訟における確認の訴え同様、何を確認の対象とすることで紛争の抜本的解決になるかを念頭に考えることで、訴訟物の確定と訴訟要件の具備という両者をクリアすることができると思われる。

 

本問に関する問題点について

以上のように今回は大まかな確認にとどめたのも、本問において問題となる点がなかなかにして論点を含まなかったからである。確かに、届出制において行政庁が届出を受理せず返戻するといった手続き上の違法については理解しなければならないところであるが、これも、この場合に争う方法が実質的当事者訴訟としての「届出義務を履行したことの確認を求める訴え」を提起するという結論さえ知っていれば回答できる。さらに、設問2における意見・勧告についても同様に、処分性が否定されるため抗告訴訟は提起できず、国家賠償訴訟の中で違法主張をするということに帰結し、これに関する解説も省かれている。

 

もっとも、設問2後段の制裁的公表という行政庁の行為は、今後も注目しておくべきものと思う。これも処分性の有無の問題になるが、一般的な消費者への情報提供としての公表ではなく、行政指導に従わないことに対する制裁的公表は、権力的事実行為ととらえて抗告訴訟の対象とすることができるとも考えられる。本問解説では、制裁的公表も行政指導に過ぎず、処分性が認められないため抗告訴訟を提起することはできず、民事上の差止請求をすることができるにとどまるとしているが、民事上の差止請求というのも根拠が明文上になく、いかなる性質か、要件はいかなるものか、不明確な点が多いものである。行政法の事例問題であるなら、制裁的公表の処分性を一蹴して民事上の請求に逃げるのではなく、権力的事実行為の論点に踏み込んでもらいたかった。