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【商法7】買収防衛策としての新株予約権無償割当

商法

今回は、事例で考える会社法 事例14を素材に、買収防衛策としての新株予約権無償割当の問題について考えてみようと思います。参考判例は、ブルドックソース事件(最判h19・8・7)とニッポン放送事件(東京高決H17・3・23)です。

 

今回の事例では、前半部分で募集株式の発行の差し止めを求める方法について問われています。まず、この点を確認し、本題である買収防衛策としての新株予約権無償割当の問題について考えていこうと思います。

 

募集株式の発行の差止め

まず、本件事例でY社がN社に株式を発行する取締役会決議がなされたことから、Y社の既存株主たるX社がこれを差し止めようと考えている。

 

募集株式発行の差止めは会社法210条に規定されているが、その要件としては、法令定款違反がある場合(1号)と不公正な方法による場合(2号)とされている。

 

基本的な考え方として、法令定款違反については、取締役会における募集株式発行の手続き上の瑕疵の有無を検討することになり、さらには、当該株式発行が有利発行に当たる場合には、株主総会決議を経ているかという点が問題となる。また、後述する買収防衛策としての差別的条項が付されている場合には、この条項が株主平等原則に反するのではないかという点を検討することになる。他方で、不公正な方法による発行か否かの検討では、いわゆる主要目的ルールに沿った検討をすることになる。すなわち、当該株式発行が経営支配権の維持を主要な目的になされている場合には、著しく不公正な発行といえ、差止めが認められることになる。

 

募集株式発行の差止めでは、上記の要件とともに、当該株式発行がなされることにより株主に不利益が生じる恐れがあることも必要とされている点に注意が必要である。事例を検討する上では、会社法上の手続きの履践や株主の実質的な不利益などの検討をしっかりとする必要があるだろう。

 

買収防衛策としての新株予約権無償割当

では、本題である買収防衛策としての新株予約権無償割当の問題について考えていこう。

 

本事例も含めて、検討するべきは、ブルドックソース事件とニッポン放送事件になるであろうから、両判例を確認していこう。

 

どちらの判例においても、買収防衛策としての新株予約権の発行がなされ、これが実行されると買収を計画していた者の保有割合が著しく低下することになるため、当該新株予約権発行の差止めを申立てたという事案である。ニッポン放送事件では、買収者以外の者への第三者割当てであったのに対し、ブルドックソース事件では、全株主への無償割当という方法がとられたが、買収者については新株予約権の行使ができないとする旨の差別的条項が付されており、これにより買収者の保有割合を低下させる意図があった。

 

そこで、新株予約権無償割当についても差止めの規定(247条)が類推適用されるのを前提にブルドックソース事件では、右差別的条項が株主平等原則(109条)の趣旨に反するのではないか、そうであれば法令違反があるため差止めが認められると主張された。他方で、ニッポン放送事件では、会社経営支配権維持を目的としてなされる新株予約権発行は不公正であると主張された。

 

どちらの判例においても、最も重視されている点は、特定の株主が会社の支配権を取得することで、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されると言えるか否かという点であろう。上記の記述はブルドックソース事件の判旨にそっているが、ニッポン放送事件においても、株主全体の利益保護という観点から当該新株予約権発行の正当性を肯定できるかという点を重視している。

 

判例の相違点としては、差別的条項を付した方法かどうかという点もあるが、その他に当該新株予約権発行の最終的な決定がいずれの機関によってなされたものかという点にもある。すなわち、ニッポン放送事件では、取締役会決議により当該新株予約権発行の決定がなされているのに対し、ブルドックソース事件では、株主総会決議を経て決定されている。取締役会設置会社であれば、新株予約権無償割当は取締役会決議で行うことができるが、最終的な意思決定を株主に委ねることで、当該新株予約権発行の正当化を図ることができるともいえるであろう。

 

最後に、ニッポン放送事件によって例示された敵対的買収者の類型を確認しよう。

①真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(いわゆるグリーンメイラー)

②会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権、ノウハウ、企業秘密情報、主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合

③会社経営を支配した後に、当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合

④会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合

 

これらの類型は例示列挙であり、その他の場合にも認められる場合があり、これらに当たる場合であっても実質的な検討が必要になる。