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【民訴7】書証の証拠力

民事訴訟法

今回は、事例演習 民事訴訟法 事例10を素材に書証の証拠力について考えていきます。参考判例最判S39・5・12です。

 

本事例では、直接的には書証の証拠力が問われているわけではなく、証拠収集手段について、特に文書提出命令およびビデオ会議による証人尋問の方法について聞かれています。もっとも、その前提となる書証の証拠力について、知識の確認と整理も含めて考えてみようと思います。

 

書証の分類と証拠能力

書証については、その性質から作成者の法律行為が記載された処分証書と作成者の事実認識が記載された文書である報告証書がある。処分証書は法律行為が記載された書証であるから訴訟においても重要性が高い。

 

この書証について、文書が書証たる証拠能力を有するかという問題がある。もっとも、刑事訴訟における証拠能力と異なり、民事訴訟においては原則として証拠能力が制限される証拠はなく、例外的に訴訟類型に特有の制約を課されることがあるのみである。

 

そこで、書証において重要なのはその対象となる文書がいかに証拠力を有するかという点にある。

 

書証の証拠力

証拠力という言葉は証拠価値とも言い換えられるが、これには形式的証拠力と実質的証拠力という意義がある。

 

形式的証拠力があるというためには、文書がその作成者とされている者の意思に基づいて作成されたものであることが必要とされる。これはすなわち228条1項が示していることである。誰が作成したか不明な文書は真正に成立したとはいえず形式的証拠力が否定される。すなわち証拠価値のない証拠とされるのである。

 

さらに、この特定人の意思に基づいて作成されたことの立証は書証の申出人が負う。確かに証拠に関する事実は補助事実として当事者による立証は不要ともかんがえられるが、立証責任を負わせることが弁論主義の第3テーゼに適うものであるといえる。

 

もっとも、文書が特定人の意思にもとづくことの立証は困難となることから、民訴法はこの文書の成立の真正について228条4項で推定規定を設けている。これはいわゆる二段の推定と言われるものであり、

私文書に存在する作成名義人の印影が同人の印章によって顕出された場合には、反証がない限り、その印影は作成名義人の意思に基づいて成立したものと推定されるとした判例を第1段目の推定(事実上の推定)とし、

その結果として、228条4項により文書全体が真正に成立したものと推定されるというものである。この第2段目の推定は法廷証拠法則とするのが通説である。

 

また、署名や印影のない文書であって、作成名義人が不明確である場合でも、要証事実との関係で特定の範囲内の者によって作成されたことが確定されることで、形式的証拠力を認めることができるとかんがえられる。

 

二段の推定とその反論

上記のような二段の推定が働く場合、これに対する反論をどのように考えるべきであろうか。

 

まず、一段目の推定を覆すための防御方法として、間接反証という考え方がある。つまり、印影の存在により「作成名義人の意思にもとづく作成」が事実上推定されることから、この事実と反し、裁判官に確信を抱かせないようにする立証活動をするということである。例えば、印鑑盗用の事実や多目的預託の事実であるとされる。

 

他方で、二段目の推定を覆すための防御方法はいかなるものとなるか。これは、二段目の推定、すなわち228条4項の性質を法定証拠法則と考えるか法律上の事実推定と考えるかにより立証の程度が異なる。通説のように法定証拠法則と考えれば、相手方当事者がこの推定を覆すのに反証で足りるが、法律上の事実推定と考えれば本証が必要となる。

 

事例研究民事法Ⅱ第2部問題2ではこの二段目の推定を争うという設問があり、ここでは、「委任状に判を押したことは認めるが、委任状交付時点では委任事項が空白であり、他に濫用された恐れがある」という主張がこの二段目の推定を覆す主張であるとされている。つまり、文書の作成については自己が押印し、自己の意思にもとづくものであるが、その文書の成立の真正は全体には及ばないという主張である。

正直なところ、この設問におけるこの主張のみでこの文書についての争いが解決するかは疑問であるが、どうやらこの様なことであるようである。

 

 

 

最近ではつくづく民訴の苦手さを実感している。基本書に立ち返り、細かい知識を過去の択一で確認しながら実のある議論ができるようにしたい。