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【商法8】違法な現物配当と株主の責任

商法

今回は、事例から考える会社法 事例15を素材に違法な現物配当と株主の責任について考えてみようと思います。素材となった判例は不明ですが、百選掲載の裁判例として大阪地判H15・3・5が該当箇所のものです。

 

今回は、基本的には条文解釈が中心となる問題であるが従来の学説と立法者意思が食い違い錯綜しているところのようなので、自分の疑問もメモしながら確認していこう。

 

違法な配当に関する責任

本事例では、株主たるAが甲会社に負う責任について問われている。そして、Aが受けたものとすれば、甲会社からの現物配当としての乙会社の株式と、Aが申し入れたAの有する甲会社の株式の買取の対価ということになろう。

 

まずはAが甲会社から乙会社株式を配当として受けたことをどのように考えるか。そもそも分配可能額を超えてなされる配当が有効と言えるのか、無効なのかが今回の問題の中心となる。

 

条文を確認すれば、本事例におけるAが負うと考えられる責任は、会社法462条の責任である。この条文も非常に読みにくい条文である。

 

まず、1項柱書きを見ると、分配可能額規制違反によりなされた行為について責任を負う者を3種類規定している。それは、①金銭等を受けた者、②業務執行者、および③当該各号に定める者である。そして、受ける責任の内容は、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭の支払い義務である。さらに、1項各号には分配可能額規制に違反してなされた行為類型が掲げられ、各号イ・ロに上記③に該当する責任を負う者が指定されている。

 

462条1項各号の行為類型は条文引用型で規定されわかりにくいため、確認しておくと、

1号は自己株式の取得、

2号は自己株式の取得価格の決定に基づく株式の取得、

3号は全部取得条項付種類株式の取得、

4号は所在不明株主等の株式の会社による買取り、

5号は1株未満の端数処理時としての会社による買取り、

6号は剰余金の配当である。つまり、分配可能額規制に反してなされた行為が上記のいずれかに当てはまるかを確認することになる。

 

本事例で言えば、現物配当として乙会社の株式を取得したことは6号にあたる。では、A所有株式の買取りによる対価の取得はどうであろうか。自分が悩むのは462条1項1号および2号の二択なのだが、そもそも、156条1項および157条1項の区別がよくわからない。同じものを規定しているように見える。だからこそ462条1項においても1号か2号かが判断できない。もし答案に書かざるをえない状況に陥れば、どちらも書くしかない気もする。解説を読んでも甲会社のAからの株式取得は156条・157条の自己株式の取得に当たると包括しているから答えになっていない。区別が重要でないのならそれでいいのだけれど、疑問は残る。

 

本題はそんな疑問ではなく、分配可能額規制に反してなされた違法な配当の効力の有無である。解説にある記述を整理すれば、立法者意思としては違法な配当でも有効であり、株主の善意・悪意に関係なく売却対価相当額を支払う義務を負う。もっとも、配当は有効であるから、現物配当の場合には当然に取得することができ、現物返還の必要はない。これに対して従来の学説は、違法な配当は無効であると考えていた。そして、これを前提に462条の支払い義務の性質をいかに考えるかで対立があった。考え方としては、現物返還義務を認めることが妥当ではないと考えるとすれば、462条1項を不当利得返還請求権の特則として、金銭の返還のみ認められるというものと、462条1項の義務として不当利得返還請求権が発生するのだと考えれば、原則現物返還を認めることになる。

 

また、Aが同時履行の抗弁を主張することができるかという点も問題である。立法者意思としては、これを封じるために有効と考えるとされている。無効説のうち、民法上の不当利得返還請求権が生じると考えた場合には当然同時履行の関係に立つ。462条1項が不当利得の特則であると考える立場からは、同時履行の抗弁を認めないということになる。

 

判例のないところであるから、いずれの考え方に立っても不正解とはならないという心強い田中亘教授の言葉を信じて、事例により株主を保護すべき要請が強いと考えれば、無効・不当利得の立場で全面的に保護をし、株主保護よりも会社債権者保護の要請が強いと考えた場合は、無効・不当利得特則の立場もしくは有効の立場で、といったように柔軟に考えてよいのではないだろうか。重要なことは、このような錯綜した議論が存在する問題だということを認識し、意識して書けることだろう。