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【商法9】会計帳簿の閲覧請求、株主名簿の閲覧請求

今回は、事例で考える会社法 事例16を素材に、会計帳簿の閲覧請求と株主名簿の閲覧請求について考えてみようと思います。

 

今回の問題はそこまで複雑な論点を含むものではないため、平成26年改正のあった部分を含めた条文を確認していきましょう。

 

会計帳簿の閲覧請求

まず、甲会社は乙会社における貸借対照表等を作成するために用いた有価証券台帳および有価証券元帳の閲覧謄写を求めたいと考えている。解説では、これらの文書が会計帳簿であることが前提としてなされているが、これは、会計帳簿を元に計算書類を作成されること、計算書類とは貸借対照表、損益計算書、株主等変動計算書および個別注記表を指すとされていることから、貸借対照表を作成するために用いられた二つの文書は会計帳簿に当たると考えられるためである。

 

そして、甲会社は433条1項を根拠に会計帳簿の閲覧謄写請求を行うことになる。要件としては、総株主の議決権の100分の3以上の議決権か、発行済株式の100分の3を保有することがあるが、そのほかに問題となるのは、会計帳簿の閲覧謄写に対する理由を明らかにしなければならないというところである。

 

この閲覧の理由について原告側に立証責任が課されるかが問題となるが、当該文書を閲覧することで請求する側は事実を証明することができるのであって、この文書の閲覧のために理由の立証を要求することは本末転倒である。

 

そこで、この閲覧の理由については、閲覧を求める理由と、閲覧対象となる書面を特定できるよう具体的な閲覧目的が記載されていれば認められるものと考えるべきである。

 

そして、乙会社としては、この甲会社からの閲覧請求を拒否することができるかどうかが問題となる。433条2項は各号に掲げる事由がある場合には閲覧請求を拒むことができるとしているから、乙会社としては甲会社の請求が433条2項のいずれかに該当する旨を主張する。本問で言えば、3号の競争関係にある場合であるとして閲覧請求をこばめるだろうか。この実質的に競争関係にある事業を営みというのは、現在においてそのような事業がなされている場合のみならず、近い将来に行われる可能性がある場合にも認められるべきものである。

 

株主名簿閲覧謄写請求

では、甲会社が閲覧請求をしているのが株主名簿であったばあいにも同様の処理となるのであろうか。

 

ここで、平成26年改正が関係してくるが、改正前においては、株主名簿閲覧謄写請求の拒否においても、433条2項3号と同様の規定が存在した。もっとも、この規定は改正により削除された。したがって、乙会社としては、他の拒否事由を主張せざるを得ず、この点で会計帳簿の閲覧謄写請求を拒む場合とは異なるといえる。

 

 

ところで、このような改正によって処理が異なるに至った手続きが問題として出題された場合に、「改正によって削除されたのだからこれを拒否事由としないものとしたと考えられる」といった考慮を答案にあらわしていいものなのだろうか。実際自分のばあいには、判例理論であったりする場合にも、明確に「この点、判例は〜」といった書き方をすることはしたくないところがある。これは、判例をミスリードしていた場合の予防線ではあるけれど、判例理論に乗っかるとしてもそれを素直に当てはめるようなものはほとんどないのだから、やはり判例理論を論理の一つに組み込むといった書き方をしたい気がするのである。

 

そのような書き方ができているとはお世辞にも言えないと思うが。