【民法9】継続的契約の解除、複合契約の解除

今回は、法学教室2016年7月号 演習 民法を素材に、継続的契約の解除と複合契約の解除について考えていこうと思います。参考判例最判H8.11. 12です。

 

 

今回は、法学教室2016年7月号 演習 民法を素材に、継続的契約の解除と複合契約の解除について考えていこうと思います。参考判例最判H8.11. 12です。

今回の問題は、オープンアカウントという方式でフランチャイズ契約が締結されたという事例であり、やや馴染みのない契約方式になってはいるが、基本的には深入りしなくても解答することができると思われる。問題となるのは、本件でAは、B社との上記フランチャイズ契約のみならず、C社との間で店舗αの賃貸借契約を締結しており、設問ではそれぞれいずれかの不履行を根拠に両契約の解除を行っているという点である。このような複合契約と解除の問題について、判例をもとに考えていこう。

 

付随的義務の不履行


もっとも、設問1では、上記の複合契約と解除という問題のみならず、付随的義務の不履行と解除という問題も含まれている。この点についての参考判例最判S36・11・21である。
設問1では、AがBに対して仕入れ代金の明細報告を再三にわたって求めていたがこれがなされなかった事を理由にフランチャイズ契約自体(およびCとの賃貸借契約)の解約をしている。債務不履行を理由とする解除においては、一つの契約から生まれる権利義務が複数になることがままあるため、いずれについて義務の不履行が生じた場合に解除が可能かという問題が生じる。そして、これは基本的には契約の目的に不可欠で、それが履行されなければ契約しなかったであろうと認められた場合に解除が可能であると考えられている。仮にこのような契約の目的に不可欠であるとは認められなかった場合には、当該義務は付随的義務に過ぎず、これが履行されなかったというのみでは解除をすることはできないと言える。
また、フランチャイズ契約のような継続的契約が前提となっている場合には、賃貸借と同様に不履行があったのみならず、信頼関係を破壊する程度と認められなければならないとも考えられている。本件で言えば、フランチャイズ契約において仕入れ代金の明細の報告についてはフランチャイズ契約のオーナーにとっては契約をするか否かの判断に大きな影響を与えるものであり、契約の要素といえ、再三の求めにも応じていないことからも信頼関係は破壊されたといってよいだろう。したがって、(Aとの関係において)契約の解除は認められる。

 

複合契約と解除


では、AがBとの契約を解除できるとして、不履行のないCと契約をも解除することができるだろうか。複合契約と解除問題について考えていこう。
ここで、この問題を考える上で重要な視点がある。それは、このようなAB間の契約(契約①)とAC間の契約(契約②)を別個に独立する契約と見るのか、それともこれら両契約は一つの大きな契約が締結されていると見るのかというものである。特に本件ではC社がB社の関連会社であって、B社とのフランチャイズ展開した店舗の賃貸を主としていることから、両契約ともにB社が主体となっていると見ることも可能であろう。もっとも、参考判例では同一の当事者間の複数の契約についても一つの大きな契約と見ることには消極的であり、別個独立の契約である事を前提としているため、やはり契約自体は独立していると考えて、両契約の密接関連性を考慮していくことが妥当であると考える。
両契約自体は別個独立のものであるが、これらが密接関連性を有していることから、一方のみの履行がなされたとしても他方において履行がなされずこれによって契約の目的が全体として達成できなくなる場合には一方のみの不履行でも両契約をいずれも解除することができると考えるべきである。上述した通り参考判例と異なる点とすれば、Aにとっての契約相手が同一ではないということであろう。もっとも、前述の通りBとCが関連会社であり、同一の相手方と同視することができる本件では、契約の密接関連性と目的不達成の要件を満たせば解除が可能であろう。
設問1と設問2では不履行の主体が異なるが、いずれにおいても契約の密接関連性と目的不達成が認められるから結論は異ならない。
設問3ではABCの三者でさらに店舗を増やすフランチャイズ契約(契約③④)を締結しており、この③についてAに不履行があった場合に、同様のフランチャイズ契約である①も解除することができるかということが問題となっている。確かにいずれも同様のフランチャイズ契約であるから関連性がないとは言えないがそれぞれの目的としては各店舗における利益であって、別個の目的であり密接関連性を有するとは言えない。さらに、既存のα店舗でのフランチャイズ契約で不履行がなされていないとすれば、③④契約が不履行となっても①②における目的は未だ不達成とは言えない。したがって、BおよびCがした①②の解除は無効となろう。