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【刑法3】平成28年司法試験刑事系1問目

司法試験 刑法
今回は平成28年司法試験刑事系1問目を検討していきたいと思います。

やはり実際の試験問題を見ると不安になるけど、「2時間で書けるレベルのみ求められている」と自分の心に言い聞かせて、ある意味割り切っていかないといけないと思った。

問題の概要

まず、問題の概観を確認していくと
甲乙丙は某組の一員で、甲の指示で乙がV方に入り金銭を強取し、この乙の暴行でVは死亡したというもので、甲は乙が計画を実行する直前に中止するように伝えている点、丙は当初は強盗への参加を断ったものの当日に乙がVの反抗を抑圧した後に財物取得に加功したという点がそれぞれ問題となる。

他方、丁は甲乙丙とは無関係であるが、乙丙が立ち去った後に窃盗に入り、キャッシュカードを窃取した後にすでに恐怖心を抱いていたVに暗証番号を聞き出し、ATMで現金を引き出したというもので、強盗罪における暴行脅迫の程度と言えるかという点と、暗証番号を聞き出すことが財産上の利益と言えるかという点が問題となる。

今回の問題では、乙→丙→甲→丁の順で罪責検討をしていくものと思われる。

乙の罪責


乙は実行正犯であるから事実を抽出して構成要件該当性を認定していけば良いと思われる。すなわち、強盗致死罪(240条後段)の成立について、財物奪取に向けた被害者の反抗を抑圧する程度の暴行があり、財物の強取があり、Vの死亡は乙の強盗の機会になされた暴行ないし傷害により発生したものであることを認定すればよい。乙がVを殺害することまでは認識していないことから強盗殺人の成立は認められない。

V方への侵入とナイフ等の準備も評価してもよいと思うが、後者は強盗致死に吸収されるであろう。

丙の罪責

次に丙は乙がVに対し反抗を抑圧する程度の暴行をした後に犯罪に加功している。当初乙が丙に協力を求めた段階では断っていることから共犯の成立は認められない。しかし、当日になり、上記の段階で共犯関係が形成されている。

そこで、丙の負う罪責として、承継的共同正犯を肯定して強盗の共同正犯とするのか、窃盗の共同正犯にとどまるのかを検討することになる。

一般的に、承継的共同正犯は関与前の状況を認識しているにとどまらず、自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用した場合には認めることができると考えられている。

これを丙について見ると、
丙はVがふくらはぎに重傷を負っていることを認識し、乙からその経緯についても聞かされていたから、すでに作り出されたVの反抗を抑圧された状況を認識していたといえる。さらに、自己の取り分として報酬をもらえることを期待して乙と一緒にV宅から現金を持ち出している。そうであれば、すでに作出された反抗抑圧状態を積極的に利用し、自己の犯罪として参加したものといえる。

以上から、丙には強盗罪の共同正犯を認めてよいといえる。もっとも、Vの死亡に対する責任を負うかという点については、丙の行為としの傷害ないし死亡の間に因果関係を認めることはできないのであるから、否定されることになる。

甲の罪責

さらに甲の罪責について考える。
まず、甲が乙に指示をしたことをどう評価するか、共謀共同正犯と認めてよいかを検討することになる。共同正犯の成立を認めるためには、正犯意思が必要とされるため、甲が自己の犯罪としてVへの強盗がなされた(なされるはずだった)と言えなければならない。そこで、事実からこれを基礎づけるものを抽出し評価していく。

甲につき共謀共同正犯を認めた場合、乙が実行に着手する前に電話で中止するよう言っていること、乙がこれに「分かった。」と答えていることから、共犯関係の解消について問題となる。

甲のように犯罪の計画につき重要な役割りを担う者については、離脱の意思の表示及びこれに対する了承だけでは足りず、共犯の処罰根拠が因果関係にあることからも、共謀関係がなかった状態に復さなければならないとされていることから、電話で中止する旨を伝えるだけでは共犯関係が解消したとは言えない。

したがって甲は乙との共謀共同正犯が成立する。もっとも、いかなる範囲で成立を認めるか、とりわけVの死亡に対しても責任を負うのかが問題となる。

これは甲と乙の共謀がいかなる範囲のものであったかにより結論が変わると思われる。強盗を指示し、ナイフを準備させていることから暴行も共謀の範囲内であったというのが素直な結論のように思う。
また、結果的加重犯の共同正犯と考えて、基本犯に共同正犯が成立することからこれを認めるという道すじも考えられる。

丁の罪責

最後に、丁の罪責にっいて検討することになるが、問題となるのはもっぱら2項強盗の構成要件該当性である。

まず、2項強盗が成立するためにも被害者の反抗を抑圧する程度の脅迫が必要であるが丁は強く迫った程度であったことから、これに当たるかという点が問題となる。ここでは、すでにVが反抗を抑圧された状態であって、恐怖心を抱いていることを理由に、本件のような脅迫でも認められることを述べる。

さらに、Tがキャッシュカードの暗証番号を聞き出していることから、この暗証番号が財産上の利益と言えるかが問題となる。この点、キャッシュカードの暗証番号を聞き出せば、預金口座から払戻しを受けられる地位を有することになるため、これが財産上の利益といえるとして、構成要件該当性を肯定することができる。

そして、丁が実際に現金をATMから引出した行為は銀行に対する窃盗罪(235条)を構成しこれらは併合罪となる。

丁についてキャッシュカードの窃取につき窃盗罪を成立させたとしても、強盗罪に吸収されることになる。


まとめ

今回は共犯関係について、その解消と承継的共同正犯について論点らしい論点が出題され、キャッシュカードの暗証番号が財産上の利益に当たるかという点は近時の判例をもとに作られていることから、やはり基本的な知識が問われているようにおもう。

実際に検討してみると、承継的共同正犯を認める理論的根拠と、キャッシュカードの暗証番号の財産上の利益性という点に理解の足りなさを感じた。多くの問題を解いて、であった弱点を深い理解に変えていくことが大切なんだと思う。