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【行政法3】平成28年司法試験公法系第2問

行政法 司法試験
今回は平成28年司法試験公法系第2問を検討していこうと思います。

今回も事例とは別に弁護士らによる会議録および関係法令の抜粋などの資料が添付されています。今回は建築基準法都市計画法その他の法令、さらには建築基準法における要綱もあり、なかなか添付資料の量が多かったように感じます。もっとも、会議録における誘導も参考になるため、論点探しに時間を使うというより、資料を十分に読み込んできちんと答案に引用することが求められていたように思います。

事例としては、スーパー銭湯の新設のための建築確認の事例で、付属の駐車場は建設予定地が都市計画法上の第一種低層住居専用地域であるため建築基準法48条1項ただし書きに基づき市長の許可(例外許可)が必要であった。そこで、当該スーパー銭湯を建設しようとするAは市長に例外許可を申請し、これが認められた。その後、建築確認を受けた。このスーパー銭湯建設予定地の近隣に住むXらがこれを阻止するため、例外許可に対する取消訴訟と建築確認の取消訴訟とを提起した、というものである。

今回は訴訟類型については設問で問われることはなかったが、
設問1が例外許可に対する取消訴訟におけるXらの原告適格について
設問2が例外許可に対する取消訴訟におけるXらによる違法事由の主張について
設問3が建築確認の取消訴訟において例外許可の違法を主張できるかについて
設問4が建築確認の取消訴訟におけるXらによる違法事由の主張について
がそれぞれ問われている。
既に述べたように、これらの設問に対しては添付された会議録においてより詳細な誘導がなされているため、基本的にはこれに沿って解答していくことが求められていると思われる。


設問1について

設問1では、例外許可に対する取消訴訟におけるXらの原告適格を検討する。ここで、Xらとは事情の異なる2つのグループからなっており、X1らはスーパー銭湯の自動車車庫に隣接し直線距離で6メートルの位置に居住する者たちであり、X2らは敷地から45メートル離れた位置で、かつ、幹線道路から自動車車庫に通ずる道路沿いの建物に居住する者である。

まず、本件例外許可を申請したのはスーパー銭湯を建設しようとしているAであり、この申請に対する処分の名宛人となるのはAである。そうすると、名宛人以外のXらには原告適格が認められるかが問題となる。そして、名宛人以外の第三者における原告適格の有無は、行政事件訴訟法9条2項により判断することになる。

9条1項は、取消訴訟原告適格を有する者を「法律上の利益を有する者」としている。これは、当該処分の根拠法令により保護された法律上の利益を有する者であると解される。そして、9条2項によれば、名宛人以外の第三者についてこれを判断する場合には、直接の処分の根拠法規である建築基準法のみならず、関係法令である都市計画法の趣旨目的をも参酌しながら検討することになる。

原告適格の検討では、まず、原告となろうとする者においていかなる利益があるかを特定し、根拠法規ないし関係法令が個別的利益としてその利益を保護する趣旨か否かを検討します。

本件ではスーパー銭湯の建設によりXら安全で良好な住環境を享受する利益が法律上保護された利益といえるかを検討する。まず、建築基準法の目的が「国民の生命、健康および財産の保護」を掲げているが、これだけではXらの右利益を個別的利益として保護する趣旨とは読み取れない。もっとも、都市計画法9条1項によれば、第一種低層住居専用地域では、低層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するためという目的が掲げられていることから、Xらの右利益を個別的利益として保護する趣旨といえる。

ただし、X1らとX2らでは居住する環境がことなるため、異なる判断がなされていいように思われるが、どうなのだろうか。考えられるとすれば、X1らについては右利益の侵害が確実であり、受忍限度を超えるものであるのに対し、X2らについてはスーパー銭湯建設により住環境が悪化したとは言えない、間接的な被害に対する保護は個別的利益として保護されるものではないとして原告適格を否定することになるのだろうか。


設問2について

例外許可がなされた経緯について、市長は建築審査会に諮問していたが、この決議に除斥原因のあるものが賛成票を投じていたことがわかったが、この者が投票をしなくとも結果が異らなかったため、やりなおすことはしなかったという手続き的瑕疵があった。

除斥を定めた建築基準法82条および建築審査会の委員について定めた79条2項によれば、委員は公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者である必要がある。つまり、除斥原因のある者はこの公正な判断ができない者として議事から排除された者であるから、この者が議事に参加し、賛成票を投じていた場合には、当該議事は重大な瑕疵が存するものとして違法となると主張することができる。

また、例外許可については、建築基準法48条ただし書きによるとある程度の裁量が市長に認められるものと解することができる。もっとも、この裁量権に逸脱または濫用があった場合には、例外許可処分は違法を帯びるものということができる。

建築基準法48条ただし書きについては、本件要綱に詳細な基準が定められている。この要綱の性質をどのように解するかにより裁量権の逸脱濫用の判断がわかれることになりそうである。

既に述べたように、48条ただし書きによる例外許可については市長に一定の裁量権がある。そして、右裁量権行使の基準として本件要綱は定められたといえるから、要綱の性質としては裁量基準であり、原則としてこれに法的拘束力は生じないといえる。もっとも、裁量基準として設定されたものについては、これを適用しない場合には合理的な理由が必要であると解することができる。そうだとすれば、合理的理由なき本件では、裁量基準に反してなされた例外許可は裁量権の逸脱濫用があり違法であると主張することができる。


設問3について

設問3で問われているのは、いわゆる違法性の承継の問題であり、出訴期間を経過した例外許可に対する取消訴訟ではなく、その後の建築確認の取消訴訟において例外許可の違法を主張するとができるかという問題である。

これについては安全認定と建築確認において違法性の承継を認めた最判H21・12・17を参考に検討していく。

重要なポイントとしては、先行処分と後行処分の一体性と、手続的保障の有無である。本件では、後者について事前に例外許可があった旨の通知が近隣住民になされることがないことから手続的保障がなく違法性の承継を認める方向に傾くであろう。前者の問題としては、建築確認をうけるためには例外許可が必要であり前提行為となっていることを強調し一体性を認めることができれば、違法性が承継され、建築確認の取消訴訟において例外許可の違法を主張することができることとなる。


設問4について

設問4では建築確認の独自の違法事由の主張を検討する必要がある。会議録の誘導によれば、建築基準法別表において第一種低層住居専用地域に建築することができる建築物として「公衆浴場」が挙げられており、本件スーパー銭湯もこれに当たれば確認は適法である。

しかし、上記「公衆浴場」とスーパー銭湯は実態が異なるものであり、第一種低層住居専用地域に建築できる建築物ではないのに、建築確認をしたことに違法性がある旨を主張していく。

検討の段階では、判断過程統制によると思っていたが、そもそも法の趣旨目的とことなるとすれば、裁判所は判断代置的に審査をすることができるのではないかと考えられる。


まとめ

今回の問題は上述の通り資料がおおく、これを精査しているだけでも時間がかかりそうである。前回同様添付されている要綱の法的性質についても問われており、行政法の基礎知識が重要であることは当然である。

誘導があるぶん的外れな展開になることは避けられるとしても、充実した内容をかけるかどうかはやはり他の教科と同様に基本が大事だと再認識させられた。