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【民法4】不法原因給付

今回は法学教室2016年6月号 演習民法です。

 

今回の問題は、不法原因給付についての定番事例を少しずつ変化させて考えてみるものです。

 

①AがBに対して愛人関係の継続のため、甲不動産を贈与した場合

②AがBに対して愛人関係の継続のため、甲不動産を使用貸借した場合

③AはBに対して愛人関係の継続のため、500万円を贈与した場合

④AはBに対して愛人関係の継続のため、500万円を消費貸借した場合

⑤AがBに賭博資金として500万円を貸し付けた場合

⑥AがBに賭博場として甲不動産を賃貸した場合

⑦AがBに年利500%で500万円を貸し付けた場合

⑧AがBに年利50%で500万円を貸し付けた場合

細かい設問は以上の通り、全体として、AのBに対する目的物の変換が認められるかを検討する

 

不法原因給付(708条)の基本

不法原因給付は、本来であれば法律上の原因なく取得した目的物に対しては、不当利得返還請求権に基づき返還請求が可能である。しかしながら、不法な給付の取戻しを否定することで、不法な結果を間接的に抑止することを目的とする。また、この不法については、法律行為それ自体の不法のみならず、動機の不法も含むと考えられている。

 

まずはこの不法原因給付における「給付」の内容が問題となる。

「給付」とは、終局的な履行を意味するものと限定解釈されており、贈与の場合、不動産であれば登記、または未登記の場合には引き渡しで足りる。

もっとも、貸借型契約では、このような終局的な移転は認められないため、使用利益の供与と考えることになる。

 

これを上記に当てはめれば、①③では返還請求が否定され、②では目的物の返還は認められるが、使用利益としての賃料相当額は請求できない。金銭における消費貸借については、形式的には贈与であり、実質的には貸借型であるから問題となるが、形式面を重視し、交付された元本の返還は認められない。したがって、④においては返還は認められない。

 

不法が当事者双方にある場合

⑤⑥は賭博の協力金としての貸し付けと賭博場の提供であるから、これらを使用するBにおいても不法がある。このような場合にも708条において返還を拒むことになるだろうか。

 

判例においては、給付者に多少の不法性があっても受益者のそれに比べて甚だ微弱である場合に不法な原因が受益者についてのみ存したときとなお言えるとしている。(最判S29・8・31参照)

 

本件においてもBの不法がAの不法を上回るとすれば708条ただし書きの拡張適用で、⑤および⑥は返還が認められることになる。

 

利息制限法違反と「不法」

708条における「不法」の意味も問題となる。

「不法」に単なる取締法規違反は含まれない旨判示した判例最判S37・3・8)は、倫理、道徳に反した醜悪な行為によることを要するとしている。

 

そうであれば、⑦では708条における「不法」と言えるため、無効であり、不法原因給付として返還請求することはできない。これに対し、⑧は単に無効であるが、708条の「不法」にはあたらず、返還請求が可能であるとされる。

 

 これとは射程がおよばないものの、最判H20・6・10は、708条の趣旨を貫徹し、貸主に対する借主の不法行為に基づく損害賠償請求の損害額から借主が受領済みの元金を損益相殺の対象として控除しなかったというものも記憶に留めておこう。